偏屈な施主



RC3階建ての小田原さんちは

着工して7ヶ月経ち
ようやくようやく昨日、上棟式を迎えることが出来ました。

久しぶりに現場に行くと
もう既に、建築が息をしはじめている気がしました。

昔からここに居たかのような、圧倒的な存在感。

建物を覆っているカバーや足場が
もはや、舞台の緞帳のようにすら見えます。

もうすでに舞台裏では準備が整っていて
幕が上がる瞬間を、今か今かと待っているような。


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凄まじい生命力。


嬉しい嬉しい嬉しい!


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前に、小田原さんちについて
こんな記事を書きましたが


ここにたどり着くまでに
色んな障壁がありました。

たかだか住宅レベルの建物なのに
この敷地とくりゃあ、それはそれは偏屈で。


この敷地の以前の所有者も
買ったものの「こんなとこに家なんて建てらんないわ」と
建築する前にさじ投げて売っちゃうような敷地。


ただ、3人の家族が
普通に暮らしていくために
素朴な家をつくりたいだけなのに

地盤と法規と街とが
互いに矛盾し合って、立ちはだかっていました。



土の下には、
建物とほぼ同じ高さである9mの杭が
50数本も敷き詰められることになり

土の上の建物は
ひたすら減量。

ギリギリの間口に暮らすために
コンクリートにぼかぼか穴をあけ
虫に食われた葉っぱ状態から

その穴を、あれやこれやで塞いだ
パッチワーク建築。



そこまでして、ようやく
こぎつけた上棟式だったのでした。



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そこまでして。



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そう、そこまでして、なぜここに建てるのか?




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多分、それが、家づくりにおいて
一番大事なことで





「この街に、住むのだ」



という
多分、そんな、とてもシンプルな意志だけ。



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それが、小田原さんちの家づくりにおいて
障壁を乗り越えるための、よりどころで
ぶれない軸になっていたのだろうなと思います。




この街が好きで
この街の人が好きで
この街とともに暮らすのだ。





という希望を
ただつかみ取ろうとしているだけなのだ。




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そう思うと
実務的な仕事は多々あるけれど

結局のところ、私の仕事もすごくシンプルで

そんな小田原さんの意志を
ただただ、なんらかの形で現場へ伝え続けるだけ。

究極、それだけで良いんだなと、思いました。


だって、ぶっちゃけ、ほっといたって
きっと素敵になるだろうよ、この家は。



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よく、施主力施主力、と言いはするけれど

小田原さんの家にとって、
最大の施主力はこの街が持っているし



そうそう、この敷地を含めた街全体が
施主のようなものなんだよな、小田原さんちは。
とんでもなくメンドクサイ施主。

無理難題をいうし、矛盾ばっかだし、、、、
いろんな人の営みや欲求を抱えていて
商店街を守る人たちの、ただならぬ愛情があって。





いや、小田原さんちに限らず
本当の施主力は、みんな、街がもっているんだ。


住宅なんてちっぽけで
個人の力なんて、たかが知れてる。


街という最大の施主力を無視していては
良い家なんて、きっと建たない。
ものすごく大きな力を持っているんだもの。


家が良くなるかどうかは
街の施主力を利用するかどうかに、
8割かかっている。。。。かもしれないなぁ。。







もーーーーーー
小田原さんのとこの街は、偏屈すぎて
やたら、主張してくるもんで
ついつい街をも擬人化してしまったわ、、、、。

でも、
いっぱい聞こえてきたから
多分、もうだいじょうぶだな、と思えるんだろうな。




あと竣工までの2ヶ月、、、なにしようかなぁ。

最後の勝負だもんで
ちょっと気合い入っちゃうなぁ。


西久保さんに
「あと2ヶ月、なにしましょうねー」と聞いたら


「うーん、、、、まぁ、、、、余計なものっていうか
ムダなものを、いっぱい、くっつけたらいいんじゃないかなぁ、、、」と言ってました。



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ふふふ、それなら得意だわ!!笑





うし。